はじめに

皆さんは、「どうしてこんなことができないのか」と言われたことはありますか?大抵その後に、「普通にやればできる」と追加されると思います。

ADHDの症状を思い出してみてください。どれも日常生活に制限が設けられる内容ではありません。

むしろ、誰でも一度くらいは経験がある、というのが多いかと思います。誰でもあるなら、それは「普通」のことです。

その、一見すると普通のことが限りなく苦手、というのがADHD全般の症状です。それで悩んでいると相談しても、周囲の理解が難しいのは言うまでもありません。

ありふれたことが多いので、「皆そういうことがあるけれど、頑張っている」「あなただけじゃない」こう返されることも珍しくないと思います。

あるいは「何とかなる」「気合が必要」と曖昧な対応策を挙げられることもあるかと存じますが、自然と出来ることに対し、原理を説明するのは難しいと思います。

ただ、世間一般ができることをADHDも同じようにこなすには、まずはその説明が困難なものを把握するという過程が必要となります。

それが一つや二つ、もしくは特定の場面という限られた状況下ではない為に、日常的に必要以上の体力や精神力を消耗しています。

今回は、主に精神面での疲れやすさの原因と対策に焦点を当てていきます。

原因

  1. 息抜きが苦手
  2. ワーキングメモリー不足
  3. 不必要な刺激を抑えることができない
  4. 自制が必要な状況にいる

対策

  1. こまめな休憩
  2. 体力をつける
  3. 刺激を抑えるようにする
  4. 自分を責めずに、環境を整える

~原因~

原因その1 息抜きが下手

ADHDが苦手とするものに切り替え作業があります。スイッチのオンとオフに時間がかかります。なので、メリハリのある生活を送るのが難しくなります。休憩を必要としているのに、なかなか休むことができないのです。

休めないとなると判断力も鈍ります。それでも無理に動かそうとするので更に疲労が蓄積していきます。結果、体だけでなく、心もグッタリ。心身ともに慢性的な疲労状態となります。

原因その2 ワーキングメモリーの不足

脳にある前頭葉という部分では、仕入れた情報を記録し、処理をしています。それをワーキングメモリーというのですが、ADHDはこのメモリーが少ないと言われています。

ワーキングメモリーについて、よく例えられるのが作業机です。

健常の方と比べ、症状がある方の机は小さく作られています。そこへ次から次に情報という書類が乗せられていきます。

しかし作業する場所が狭いので、とても読み切きれないし、分類するのも困難です。とりあえず、で置いたその上に、すぐさま別の書類が重ねられていきます。

散らかった机を想像して頂くとわかりやすいかと思います。

何がどこにあるのか、何をやりたかったのか、そもそも何から始めればいいのか。落ちた情報を拾うこともできず、漠然とした状況の中、ただひたすらに追われ続けます。

処理しきれない情報を絶えず受信し続けた脳がどうなるかは、お察しの通りです。

原因その3 不必要な刺激を抑えることができない

ADHDの中には、特に光や音といった視覚・聴覚への過敏を訴える方もいます。通常であれば、こういった刺激に対してはある程度ボリュームコントロールができるものです。

眩しさや雑音などをシャットダウンして意識の外に追い出すのですが、この流れがほぼ出来ないのがADHDです。紙をめくる些細な音、クラクションなどの騒音、スマホのライト、信号の光。そういったものがダイレクトに伝わります。

また、刺激を受けるばかりではありません。何かに集中したいと思っても、阻害されてしまうことが多々あると思われます。邪魔が入れば気は逸れやすくなり、フラストレーションが溜まっていく一方です。

原因その4 自制が必要な状況下にいる

多動や衝動が強い方だと、自生が必要な場面は大変に息苦しいと思います。

それが許されるのであれば気負いすることもないですが、自分で自分を抑え込むとなると、それこそ懸命に止める必要があります。

学生であれば、テストや授業中。社会人であればプレゼンや電話対応など、落ち着きのなさや衝動的な行動を控えなければならないシーンは必ずある筈です。

そして、私生活であっても油断はできません。

「衝動買い」という言葉をよく耳にすると思いますが、気を付けないと買い物で破産ということにもなり得ます。あるいは咄嗟の一言で相手を傷つけてしまうことも珍しくないので、人付き合いも慎重になります。

気づくと動いている、咄嗟に行動してしまう。こういった症状を抱えるADHDにとっては、自身をコントロールするというのは大変な作業です。

無意識や反射的な動作を抑え込むための労力を公私ともに消費しているので、疲れやすいのは言うまでもありません。

以上4点を原因として述べました。

ここまでお読み頂いて、何とはなしにおわかりかと思いますが、疲れやすいというよりは、まずもって疲れている状態がスタンダードです。

普通の人が普通にできることを、同じようにこなそうとするには、数々のハードルを飛び越えていかねば追いつけないと思われます。なので、ちょっとやそっとの回復では、マイナスがゼロ程度にしかならないという見解です。

それではイタチごっこなので、ここから先の対策ではハードルを飛び越えるというより、潜り抜ける方法をご紹介します。

~対策~

対策その1 こまめな休憩

人間、長時間に亘って絶えず集中するのは非常に困難ですが、小まめに休憩を挟めば持続しやすくなるのは良く知られています。

切り替えが苦手なADHDにとっては、小まめにオンとオフを変えるのは至難の業です。それならいっそ条件反射を作ってしまうのも手だと思います。

早い話が、パブロフの犬です。これを食べたら、聴いたら、そこからオフモードと決める。休憩時間が終わるちょっと前に別の何かを用意して、そこからオンモードとする。

こうしておけば、スイッチの切り替えが多少はスムーズになるはずです。大切なのは習慣づけることです。毎日根気よく繰り返すことです。

対策その2 体力をつける

ご存じのとおり、体を動かすと興奮物質が分泌されます。

通常のADHDの脳内は興奮物質が分泌されにくい状態です。これが運動することによって促進され、脳が働きやすくなります。体力をつけるというとランニングやウォーキングを想像しがちですが、室内でのヨガや柔軟でも効果はあります。

普段から体力・精神力を消耗しているので、双方の負担を少しでも減らすためにも体力をつけることをオススメします。

対策その3 刺激を抑えるようにする

光や音の刺激がダイレクトなのは前述の通りです。これに対応する対策としては簡潔です。単に刺激を遮るだけです。

視覚はブルーライトカットメガネや、室内の照明の色合いを変える、余計な物が視界に入らないよう衝立を設ける。聴覚は耳栓やイヤホンで雑音を防ぐ。ただし外にいる間は適度に聞こえるように。

こうすることで目や耳の刺激が抑えられるので、目の前のことに集中しやすくなります。集中が削がれる時間が減れば、気持ち的にも余裕が生まれます。

対策その4 自分を責めずに、環境を整える

ADHDが世間一般の普通のことを普通にこなすには、時間がかかります。それについて心無い言葉をかけられることもあると思いますし、自責の念に駆られるのも無理はないと思います。

健常の方に囲まれて過ごしていると、自分もその枠組みにいると思いがちですが、実際はそうではありません。それを意識しないと、主に大多数との違いに苦しむことになります。

普通のことがどうして出来ないのか、と自分を責めるぐらいなら、開き直って諦めてしまうのも手段ではないでしょうか。

時間がかかるのも、周りのスピードについていけないのも致し方ないです。取り組んでいけば、いつかは出来るかもしれませんし、出来ないかもしれません。

ただ、だからといって努力を放棄していい理由にはならないと思います。

出来ない分のフォローは誰かの負担になっているのは事実です。ADHDは他人の優しさの上に胡坐をかくような言い訳に使えるものではありません。

では、どのような努力を目指すべきかですが。これには自己分析が大いに必要です。得意なこと、苦手なこと、どちらでもないこと。すぐに出来ること、時間をかければ出来ること、時間をかけても困難なこと。

少なくとも得意・不得意がわかれば方向性は見えてくるはずです。それを経て環境を整えていけば、精神的に楽になるのではないでしょうか。

おわりに

どうしても理解されにくい部分がある症状です。怠けている、努力不足と思われる方も大勢いらっしゃいます。その中で大切なのは、自分を追いつめることではなく、どうすれば生活しやすくなるかを考えていくことだと思います。

行政を頼る、同じ症状の方と交流する。とにかく一人で解決しようと思わないこと、理解ある人に相談すること。なにより自分を守ることが、疲労からの対策だと思います。