はじめに

後にADHDと呼ばれる発見がされてから今日に至るまで、およそ100年以上が経過しています。しかし1世紀が過ぎても尚、ADHDについて不明瞭な点がいくつか存在しています。

根本的なところでは原因についてです。脳の機能障害だとされてはいますが、具体的にはどの部分が原因であるのか、未だ確定には至っていません。

また、ADHDそのものを否定する説も少なからず存在しているという時点で、なかなかにあやふやな障害であることは否めません。

それでも、日々、国内外問わず多くの原因追及が行われているのは事実です。

後述しますが、昨年も大阪大学で大変素晴らしい研究結果が発表されました。新聞などにも掲載されていましたので、ご存じの方はいらっしゃると思います。

他の発達障害との関連性や脳の仕組みが明らかになっていく中、ADHDの原因としていま最も有力だとされているのが、「遺伝」と「環境」です。

親から子へ、子孫へ受け継がれていくこと。周囲の影響によっては障害が強くなること。この二つが中心になっていると考えられています。

だからといって、全ての人がADHDを受け継ぐわけではありません。

両親がADHDであるからといって、必ずしもその子供も同じかといえば違いますし、反対に両親がADHDではないといっても、自分の子供がそうでないとは言い切れません。

遺伝していたとしても、ADHDの諸症状が何の問題もないくらい快適に生きていける場合もありますし、障害がなくとも生き辛さを感じる場合もあります。

子供を作ることを考えた時、あらゆる可能性があるということを前提にして頂ければと思います。

1.遺伝

ADHDは前頭葉、主に興奮物質の神経伝達の働きが弱いのではないかとされています。簡単に説明すると、アドレナリンやドーパミンですね。

これが当事者の両親どちらかあるいは両方、更には一部の兄弟や親族にも同じ傾向がみられるという研究結果が出ています。一説では、両親二人ともがADHDであった場合に子供に受け継がれる確率は、最低でも20%最高でも50%だそうです。

このことから、ADHDの診断において、近親者で自分と同じような症状を持つ人間がいるかどうか、というのは重要なポイントになっています。

遺伝の可能性が否めない以上、少しでも発症率を下げるにはどうしたらいいのか、というところで先述の大阪大学の話に戻ります。

昨年の夏、大阪大学の研究グループから、発達障害の原因となる遺伝子を特定したとする研究結果が発表されました。

大まかにまとめると、マウスによる実験の結果、ADHDなどの神経発達障害は、特定の遺伝子が重複し、それが胎生期において何らかの理由で周囲に影響を及ぼす為に引き起こされるという内容です。

胎生期といえば、まだ妊娠の初期の頃です。人としての形が作られ始めるかどうかというような時期です。

その時点で既に問題となる遺伝子が存在していること、胎内での何かが影響を与えていることがその後に大きく関わってくることが判明しています。

何が影響なのか、ということがわかれば、例え遺伝しても脳の機能を正常に保つ手立てが見つかるかもしれません。

遺伝があることを考慮して、子供を作ることに躊躇してしまう方々もいらっしゃるのではないでしょうか。研究が進んで解明に繋がれば、遺伝的な不安を取り除きやすくなるのではと思います。

2.子供も、ADHDも、両親が育てる

さて、遺伝する可能性があるという話は上記の通りです。ここからは環境についての話になります。ADHDの診断には幼少時の活動がどのようであったか、その内容が非常に大切な項目となっています。

何故かというと、ADHDは大人になって突然そうなるというわけではないからです。大抵の場合、12歳までには傾向が確認できるとされています。

話は変わりますが、三つ子の魂百まで、という諺がありますよね。

人間の性格や行動の核となる部分は、三歳までに確定すると言われています。結構理にかなった諺です。

何のことかというと、三歳までの子供にとって一番の影響力があるのは誰かという話です。言わずもがな、一番身近にいる人間ですね。そしてそれは多くの場合、父親や母親と呼ばれる存在です。

ここまで書けばおわかりになるかと思います。子供は親の姿をよく見ています。知っている言葉は少なくとも、感じ取ることは非常に多いのです。

時間の使い方、段取り、物の言い方。そういった物事に対する姿を、大人が思っている以上に子供は学び吸収しています。結果的にADHDの傾向を学ぶことでADHDの症状を強くすることもあるのです。

この親にしてこの子あり、とはよくいったものです。

当たり前ですが、それだけが環境要因とは言いません。栄養の偏った食事、睡眠時間、胎内や出生時の状況等々。考えられることは山ほどありますが、要因の殆どが幼少期の生活に要を置いています。

ADHDの症状が強くなれば日常生活に支障が出る確率が高くなります。その強さがどの段階で決まるか、というのは幼少期の生活にあるといっても過言ではないと思います。

おわりに

これらの内容は子供を作ることを否定するわけではありません。どんな子供であれ、いつ何が起こるのかは本人ですら予測できません。

良い意味でも悪い意味でも、どんな人にもあらゆる可能性はあります。恋人ができること、階段から落ちること、留学すること、骨折すること。

その上で、考えてほしいと思うことがあります。近年、出生前検査というのが話題になりましたね。ADHDも特定の遺伝子が見つかったということで、出生前にそれを発見できるのではという期待の声があります。

人にはそれぞれ、事情があります。結果次第で子供の未来が決まるのが、良いのか悪いのか私にはわかりません。いつかこの先の未来で、生まれる前に自分の子供がADHDだとわかったら、どうしますか?

そしてその時、まだお腹の中にいる子供に人権が認められていたら、どうしますか?正常であるという条件付きの出生のみが認められるような将来にならないことを願います。